誰も教えてくれない、薬機法チェックは非弁行為なのか?という議論

「それって非弁行為ではないのですか?」

薬機法に係るサービスを提供している方であれば、一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。

合同会社B&H Promoter’sでは、2013年の事業開始当初から顧問弁護士と綿密に連携し、弁護士法違反とならないように業務を行っています。

2022年6月にグレーゾーン解消制度により「契約書のAIチェックサービスが非弁行為になる可能性がある」との見解が国より示されました。この件については『ビジネス法務』2022年11月号で特集が組まれていますので、興味ある方は購入してご覧ください。

このことを受け、弊社としては6月の時点で顧問弁護士であるベリーベスト法律事務所 内野弁護士と連携し、改めて事業全体の精査を行っています。

本来公開する予定はなかったのですが、B&H Promoter’sとしてここまでコンプライアンスを考えてクライアントにサービスを提供していることをしっかりお伝えしたいと思い、公開することを決めました。

また、最近はSNS等で弁護士の代わりになることを訴求して薬機法チェックの依頼を受けようとしている非弁護士事業者の方も見かけたため、注意喚起の意味も兼ねています。

非弁行為の解釈に関しては弁護士の先生方におかれても解釈が異なるケースがあるため、本記事はあくまでもB&H Promoter’sの顧問弁護士による解釈であることを記しておきます。また、私の個人的な解釈が入ることを避けるために、本記事では特記しない限り顧問弁護士の文章・口頭回答を元に文章を作成しています。

そもそも非弁行為とは何か?

非弁行為は弁護士法第72条に規定されています。

弁護士法72条では、「弁護士又は弁護士法人でない者は、①報酬を得る目的で…②その他一般の法律事件に関して③鑑定…その他の法律事務を取り扱」うことはできないと規定しています。①から③の全てに該当する場合、いわゆる非弁行為として、弁護士法72条に反することになります。

「一般の法律事件」と「法律事務」の解釈について

まず、「一般の法律事件」と「法律事務」の定義に関して、統一的な解釈は存在せず、学説でも見解が分かれています。以下は、裁判例等を踏まえた顧問弁護士の見解です。

(1)「一般の法律事件」

指標となる最高裁判所の判例等はありませんが、東京高等裁判所昭和39年9月29日を引用すれば、「一般の法律事件」とは、「権利義務に関し争があり若しくは権利義務に関し疑義があり又は新たな権利義務関係を発生する案件」を指すものと考えられます。

すなわち、権利義務の存否に争いがある内容(例:貸金の返還について争いがある)か、権利義務関係を新たに発生させるような内容(例:契約の締結)が、対象になるものと考えられます。

この要件を反対に解釈する裁判例もありますが、法務省監修の書籍も上記の立場と同じような考え方で記載している部分もあるため、基本的にはこの考え方を採用しても問題はないと考えます。

(2)「法律事務」

前述した裁判例を参照すると、「法律事務」とは、「法律上の効果を発生変更する事項の処理」を指すと考えられます。

すなわち、「一般の法律事件」に該当することを前提に、その解決等のために必要な事項を処理することをすれば、該当することになるといえます。

なお、「鑑定」とは簡単に述べると、専門的知見に基づいて見解を述べるものなので、法律上の専門的知見を前提に法的見解を述べてしまうと「鑑定」となってしまいます。

B&H Promoter’sが提供している各サービス・お問い合わせいただくサービスについて

販促物の制作について

ランディングページやメールマガジン・チラシなどの販促物制作については、そもそも薬機法OKNGなどの解釈をすることはないため非弁行為にはなりません。

行政の過去の指導事例やYahoo!の広告審査基準をベースにし、さらに自社の過去の業務経験を元に、広告審査をスムーズに通過することを目的としてNG表現を使うことのないように制作を行っています。

いわゆる薬機法チェックについて

広告審査に落ちたためにリライトして欲しいというケース

問い合わせにおいて頻出のご相談です。

広告案の表記のみを考慮してリライト等を行うため、「一般の法律事件」には該当せず、弁護士法72条に反することにはならないと考えています。

B&H Promoter’sでは、「以前●●の表記で弊社も申請したことがあったが、審査を通過しなかった」「広告媒体から、●●という標記を直してほしいと必ず言われる。」といったように、Yahoo!の広告審査基準をベースに各媒体のルールを加味し、さらに自社の過去の業務経験を元に、修正案をフィードバックしています。

「薬機法として問題ないか見てほしい」というケース

依頼内容が「薬機法の条文と照らして違法とならないか見てほしい」という趣旨であれば、「鑑定」に該当する可能性が極めて高いので、場合によっては弁護士法72条違反になる可能性があると考えます。

そのため、B&H Promoter’sでは、「薬機法の適法性を見て欲しい(要はOKNGを明確にして欲しい)」「リスク判定をして欲しい」といったご依頼に対しては非弁行為に該当する可能性があるため、各都道府県の薬務課への相談を紹介しています。

薬機法かけこみ寺で提供している「薬機法の知恵袋」について

薬機法かけこみ寺は、広告制作を行う販売メーカー・広告代理店のための、制作支援サービスです。具体的には日々制作で出てくる疑問を解決することを目的としています。

薬機法の知恵袋では、日々の業務でてくる相談回答を行っていますが、この場合でも「薬機法的に○×」を回答するのではなく、「広告媒体基準としてどうか」「過去に同様の違反事例がなかったか」といった観点から回答をしています。

「○○という表現は薬機法として○×です」という回答をしていないのは、そもそも薬機法かけこみ寺のクライアントの主訴は「広告審査」であること、それに加え非弁行為になってしまう可能性を少しでも排除するという事業上の配慮です。

広告制作・マーケティングに係る相談や社内研修

昨今、企業内部のコンプライアンス整備が求められていますが、まだまだ対応できていない企業があるのも事実です。

また、企業からは

「単にOK/NGだけ教えられても意味が無い(自分たちではどうにもできない)」
「法に対応しながら魅力的に訴求できる表現が欲しい」

という要望を受けています。

そこで、B&H Promoter’sでは、

・薬機法などの法律の概論の社内研修
・クリエイティブ制作における制作のポイント・ノウハウのOJTによる伝授
・アフィリエイターなどの第三者が広告制作を行う上でのガイドラインの整備(○○は書いちゃだめといったマニュアル)

をサービスとして提供しています。

当然、セミナーにおいては質疑が多数出てきます。

回答するにあたっては弊社の業務経験を主軸とし、公開されている行政等の資料を参考資料とする場合もロジカルな思考を求められますが、それ自体はあくまで弊社の業務経験を補充するものにしかすぎないので、問題はないと考えています。

広告審査支援ツール(仮)の運用・提供について

B&H Promoter’sでは、広告審査支援ツールを開発・運用しています。

そもそものツールの立ち位置から説明すると、薬機法チェックツールとして開発したのではなく、広告審査を通過するライティングを支援するためのツールとして開発しました。

データソースとしては行政が公開しているNG事例や、Yahoo!広告審査ガイドラインをもとに関連する語句を集めてデータベース化したものです。例えば、病名はNG→病名データベースに掲載されている病名を追加 などのイメージです。

本ツールに関しては「広告審査に落ちたためにリライトして欲しいというケース」で書いたように、媒体審査基準や過去の業務経験の蓄積から導かれる意見をチェックという形で示しています。

薬機法上の適法性を示すツールではないため、弁護士法第72条には違反しないと考えられます。

また、昨今「弁護士監修」と銘打って展開している薬機法チェックツールが存在しますが、弊社顧問弁護士の解釈では、弁護士の監修を入れたとしても、実際に実行する者が弁護士又は弁護士法人以外であれば、ツールが出力する結果によっては弁護士法72条違反の恐れは付きまといます。

また、本ツールの開発にあたっては他社特許を侵害しないよう、弁理士による助言も受けた上で開発していることは付記しておきます。

B&Hライター養成講座などの育成事業について

講座の中に事例検討会というものがあり、ZOOMを使用して受講生が集まり、参加者で「この事例はどうなんだろう?」というのを議論する場があります。

例えばよくある質問の一例です。

1.「○○という表現を広告で見かけたのですが、薬機法としてどうなんでしょうか?」
2.「クライアントさんに○○という表現は大丈夫なの?って聞かれたんですが皆さんはどう思いますか?(もちろん守秘義務についてはクライアント了承済みのものに限っています)」

1については見かけた広告に対する意見交換(何かを判断するわけでもなく純粋に意見交換している)なため、薬機法的にOKNGというディスカッションをしていても特に問題ないと考えられます。

2についても1と同様に、基本は参加者によるディスカッション・意見交換であるため、鑑定・法律事務には当たらないと考えられます。

まとめ

薬機法チェックは非弁行為にあたるかどうかはサービスの名称ではなく、具体的にどんな行為をしているかがポイントです。

その中でも特に関係していくるのが「適法性の判断」。適法性の確約が欲しければ、それは都道府県の薬務課の仕事になるため、薬務課に相談に行くことを強くオススメします。

また、本記事では薬機法チェックについて記載していますが、医療法チェック(医療広告ガイドラインのチェック)も同様に考えることができます。

 

B&H Promoter’sは、今後も「セールスライティング・マーケティングの知識と薬機法などの法律の知識を合わせ持ち、企業の売上に貢献する」をコンセプトに、クライアントさんの利益の追求に貢献します。

制作・社内研修など、何かお困りごとがあればまずはお気軽にお問い合わせください。

個人情報の取り扱いについてをよくお読みください。

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