薬機法(薬事法)を理解する上で必要なことの1つが「事例」の把握。薬機法は指導事例は公開されることが基本ないため、知る機会は非常に限られます。
そこで活用したいのが、東京都福祉保健局が開催している『医薬品等広告講習会』。私は毎年、質疑応答を聞きたいがために参加していますが、今年は回答数がすごかったです。
ものすごく役に立つ内容も回答していたので、私がメモしていた限りの内容をジャンルごとにまとめました。質問が該当性に関わる質問(例:○○は雑貨と医療機器どちらになりますか?)は雑貨もしくは医療機器のどちらか片方に記載しています。
ぜひ、日々の業務の参考にしてください。量が多いので、「CTRL+F」(Windows)などで検索すると便利です。
もくじ
医薬品・医薬部外品(薬用化粧品以外)
→発毛促進については効能効果であれば記載することは可能ですが、発毛促進剤という書かれ方をすると、医薬品と誤認を与える可能性があるので不適切であると考えております。
→衣類であってもそこに塗布されている薬剤によって、衛生害虫の忌避を目的とする場合は、医薬品または医薬部外品に該当します。
→薬機法上の広告にあたると考えますので、もし薬機法の68条に違反するようなものであれば、このような広告はできないということになります。
→使用体験談については、使用感であればOKです。
効能効果・安全性といったものは不可ということになります。
医薬部外品(薬用化粧品)・化粧品
→髪質改善については、化粧品の効能を逸脱していきますので、広告できない表現になります。
→シワ改善の医薬部外品は、基本的には目尻のシワを評価項目にして審査が行われていますが、目尻だけに限定するものではありません。
ただし、そこまで大きくシワが改善するものではなく、実際にほうれい線が改善するまでの効果はそこまでないため、承認された効果がどの程度なのか確認して広告していただければと思います。
→当然特記表示をする場合は、配合目的が必要であり正規成分については化粧品の効能の範囲なので事実であれば記載することは可能です。
製品の抗酸化剤も、ただちに不可というわけではありませんが、そもそも製品自体の抗酸化剤を特記する理由があまりよくわからないので、成分自体を特記すること自体があまり望ましいものではないと思います。
当然ながら人体に対する抗酸化ということを暗示してしまうと、化粧品の効能を逸脱しますので不適切になります。
→基本的には可能だと思います。
ただ画像を加工して強調している場合などは、効能効果の逸脱や保証だと取られる可能性はありますのでご注意ください。
増毛パウダーを頭皮に振りかける場合や地肌の隠し具合についても、同じ考え方で大丈夫だと思います。
→ただちに抵触するものではないと思いますが、表現を強調してしまうと、効能効果の保証と取られる可能性もありますので、広告全体を見て判断することになるかと思います。
→美肌菌というものが、何を指しているのかにもよりますが、おそらく肌の常在菌のことを指しているかと思います。
肌の常在菌自体を、化粧品で制御するような表現はできませんので、たとえば常在菌・美肌菌のバランスを保つことや、肌の常在菌を増やすような表現は、化粧品ではできません。
→先ほどご説明しましたので割愛させていただきます。
→商品名写真というところで製品が特定されて、また個人輸入代行ということなので誘因性もありますので、広告に該当してきます。
→この表現だけであれば、不可にはしていないです。
ただ化粧品の効能の範囲で説明ができないといけないので、例えばメーキャップ効果によるとか、汚れを落とすとか、潤いを与えたりキメを整えることによって肌が明るく見えたり、視覚的に透明感が出てくるということはあり得ますので、化粧品の効能の範囲で説明できるものであれば
ただちに不可な表現ではないということになります。
ハリの質問は、具体的に広告を見てみないと判断が難しいので、こちらについては個別判断という回答にさせていただきます。
→アトピーに対する効果を暗示するので、化粧品でも言えないということになります。
→使用できます。
→化粧品で成分を特記して書く場合は、当然配合目的が必要になりますので、表示をするのであれば配合目的が必要になります。
→シワ改善の効能自体がそれほど大きな効果ではないということなので、写真で表現するのが非常に難しいものではあるかと思います。
かなり正確に表現できるのであれば、全てが無理ではないとは思うのですが、ただ顔全体を写してかなり強調されて書かれている場合は、おそらくそこまで効果はないかと思いますので、誇張された写真は不可ということになります。
→試験自体を行っているのは確かに目尻ですが、ただ目尻だけに限定して標榜しないといけないわけではありません。
当然、事実の範囲に基づいて広告を行わないといけないので、目尻が一番分かりやすいですが、それ以外の部分で本当に効果があるのかというのを、しっかり確認したうえで広告していただければと思います。
→全体の訴求として、肌の潤いや肌の乾燥を防ぐという表現については特に問題はありませんので、化粧品全体として肌の潤いを言っていただいて構いません。
→効能効果になりますので、使用体験談はできないということになります。
→不可ではありませんが、ただ角質層までになるので、本当に奥深くなのかという問題があります。おそらく奥深くではないと思いますので、その辺を考えて広告していただければと思います。
→可能だとは思いますが、化粧品でホワイトニングというのは汚れを落とすだけなので、歯自体を白くするわけではありません。
そのため、使用前後の写真を使ったとしても、それほど大きな効果に見せることはできないと思います。
→化粧品の「あせもを防ぐ」は打粉のみになります。
→「製品の良さを実感しました」という表現は不可になります。
→可能です。
化粧品を使った後の写真でも広告することができるかは、個別判断になりますので回答は控えさせていただきます。
→実験例になりますので基本的にはできないということになります。
いわゆる健康食品
→単に体の中の構成成分である、どこの部分の構成成分である、というところまでの標榜であれば可能ですが、その成分自体が、何かたんぱく質の合成に作用するとか、何か人体に影響を与えるような表現や、髪を育てるという育毛表現も当然できませんので、この質問でいうと「タンパク質合成などに作用している」と「髪を育てる」という部分が不適切です。
→個別判断になりますので、個別にご相談いただければと思います。
医療機器
→製品が特定される、さらに誘因性のある内容を取り扱うということなので、広告の3要件をすべて満たしますので、広告に該当します。
→目的次第です。
疾病の診断に使われるものは、医療機器になりますので、雑貨品であればそれ以外の目的がないといけません。
例えば、山登りのための運動管理の目的で使用される場合は雑貨品で想定されますので、一律医療機器というわけではなくて雑貨品でもあり得ます。
雑貨
→単にダニを誘引して、それを物理的に捕獲する場合は雑貨になります。殺虫成分や忌避成分が入っている場合は、医薬品や医薬部外品にあたります。
→フィルターが単にそのような成分を吸着することで、空気を清浄にするという範囲であれば雑貨品になりますので、医療機器には該当しません。
→基本的には製品を販売しているわけではないので、薬機法の対象外となりますが、例えばこのお店でそのような商品を売っており実際にその商品を使っているような場合は、商品を売るための広告にあたる可能性も否定できませんので、状況次第だと思います。
→着るだけで消費カロリーが本当にアップするのであれば、それは人体の構造機能に影響を与えていることになりますので、雑貨では広告できません。一方で、これを着て運動することによって消費するという場合もあるので、広告全体としてどのようなことを言っているのかを見ないと判断は難しいですが、ただこの製品を着用するだけで消費カロリーがアップするというのであれば、できません。
→該当性の判断が必要ですが、おそらく医療機器という判断になると思いますので、表示はできないと考えます。
→巻き爪矯正は雑貨では不可になります。
→雑貨の場合は、物に対する除菌であれば広告可能なので、その範囲であれば広告はできますが、例えば医薬品のような殺菌効果といったものは標榜できないので、殺菌を示すような画像データを示している場合は、広告できないものになります。
化粧品で除菌はうたえませんので気をつけていただければと思います。
→おそらく雑貨が医療機器に該当するかという質問だと思いますが、あくまで雑貨品として医療機器的な効能効果もうたわずに、商品名だけが「マッサージガン」だというケースだと思います。
この場合、効能効果は記載されてはいませんが、医療機器自体がマッサージという名前で、なおかつ充電式で電動の振動器具ということなので、「マッサージガン」と書かれてしまいますと、医療機器のマッサージ器と誤認を与えますので、マッサージという表現は避けていただければと思います。
→例えばこのインソールの形が足にうまくフィットするとか、何かクッション性があって靴擦れをしにくい、ということを言いたいのであれば、表現は可能だと思います。
→こちらの体表面温度の表現については、おそらく雑貨にも使われていると思います。
医療機器になるか雑貨になるかという線引きは、目的次第です。
医療機器の場合は、疾病の診断に用いるものであり、逆に言うと雑貨品でそのような目的は標榜できないので、例えば設定温度以上の対象者の入室を制限するが、その結果自体は直接診断に用いるものではなく、あくまでも入室する方のスクリーニングに使うという目的であれば、雑貨品でもこのような商品は存在し得ることになります。
ただし、その場合でも医療機器の体温計と誤認を与えないように、表現としては体温ではなく体表面温度と書く必要がありますし、また診断に用いられるような、例えば発熱しているかを判断するとか、発熱判断・発熱監視といった表現は、医療機器の表現にあたりますので、標榜には気をつけていただければと思います。
→顔色がよく見えると、ただそれだけを言いたいのであれば可能です。
→医療機器に当たるので、雑貨では難しいです。
ブラッシング効果と書いたとしても、もともとLEDを当ててということになるので難しいと思います。
→雑貨については、医薬関係者が推薦しても問題ありません。
→雑貨なので物に対する除菌であれば可能になります。
→除菌ということであれば、薬機法の問題ではなくどちらかというと景品表示法の問題だと思います。
その他(医療広告など)
→医療広告になりますので、薬機法の規制の対象外になります。
→厚労省が事務連絡を出しており、こちらの広告講習会の冊子のPDFデータの概要欄から進めますので見ていただき、冊子の中の医薬品の118ページに厚労省から出しているQ&Aを載せております。
その中で、課徴金納付命令については、製造販売業者や卸売販売業者、許可を持っていない販売業者といったものが行う取引を対象としており、新聞社や雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社、広告代理業者といったものが行う取引は含まれないことになりますので、課徴金の対象とはならないという回答になります。
ただし、そもそも販売している方の依頼元である広告主というのは当然対象になってきますし、広告媒体社や広告代理店であっても、措置命令の方は対象となりますので、対象とならないから大丈夫ではないということを、ご理解いただければと思います。
→広告代理店であっても、薬機法の66条、68条については「何人も」規制ですので、広告代理店も当然対象になってきます。
→ネイルサロンの広告については、そのサロンで行っている施術内容の広告であれば、そもそも薬機法の対象外です。
薬機法は、そこで何か物を売っている場合や製品の広告が対象となります。
→責任が問われる可能性があるとしか、申し上げられないかと思います。
→性能を標榜しないから、薬事非該当になったと思いますので、標榜はできないと思います。
→個別判断としか言えないです。
ホームページの構造や、消費者に対してどのような見え方をするのか、成分自体がどれだけその製品を特定できるものなのかという、さまざまな要素がありますので、これは個別判断になります。
→広告を行っている者以外です。医薬関係者も含みます。
→講習会の冊子は、薬務課まで行けばお渡しできるので、先に電話で聞いていただいても構いませんし、直接来ていただいて、言ってもらえればと思います。
→法規制の対象になる場合があります。
→効能効果の範囲内であれば問題にならないかと。
効能効果であれば不可です。
→これは医療広告なので薬機法規制の対象外です。
割愛されたもの
→割愛させていただきます。
→割愛させていただきます。
→割愛させていただきます。
→割愛させていただきます。
資料・テキスト入手先
東京都福祉保健局の下記ページより入手が可能です。
まとめ:薬機法の事例はとても貴重
冒頭でも書いたように、薬機法の事例は基本的に公開されることがないため、行政の方が公の場で判断をお話し頂けるのはとてもありがたいことです。
私が全体の回答を見ていて感じるのは「行間を読む」こと。コトバの行間にどのような意図が隠されているのかを考えていくと、行政の方が何を想っているのかをさらに深く知ることができるのではないでしょうか。
また、よく聞かれるのが「○○ではダメだと言われたのだけど…」というご相談。薬事行政は都道府県単位に薬務課が設置されているため、都道府県ごとに判断が変わる可能性はあります。そのため、本記事に書いてある東京都福祉保健局の回答が他の都道府県でも同じとは限らないためご注意ください。
この記事が薬機法の判断の一助になれば幸いです。