鍼灸院や整骨院を営んだり広告を作成したりするうえで、「あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等に関する法律」(通称あはき法)は必ずおさえておくべき法律です。
医師が行う治療行為に対して、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師が行う施術は、医業類似行為に分類されます。
しかし、「具体的な罰則の内容と制限範囲がはっきりしない」と頭を悩ませている方もいるでしょう。
そこで、本記事ではあはき法についてと、広告制限のポイントなどを詳しく解説していきます。
あはき法の概要や規制対象を明確にするためにも参考にしてみてください。
もくじ
あはき法とは
あはき法とは、「あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等に関する法律」のことを指します。
あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師を総称して「あはき師」と言われていますが、医師ではないので治療行為は行えません。
施術は医業類似行為として分類され、治療と捉えられない表現をする必要があります。
しかし、直接人の身体に施術をして不調を改善することから、治療行為と間違えられるような表現で宣伝をしていることも少なくありません。
鍼灸院や整骨院を営むのであれば、適正な表現での宣伝に注意が必要です。
あはき法における広告の扱い
あはき師が広告宣伝を行う場合は、法律で定められた内容を遵守しなければなりません。
職業倫理及び活動内容以外にも、あはき法では広告についても第7条で以下のように言及しています。
第七条 あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
一 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
二 第一条に規定する業務の種類
三 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
四 施術日又は施術時間
五 その他厚生労働大臣が指定する事項
② 前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。
あはき師は第7条に記載されている事項以外は広告として発信できません。
※五の「その他厚生労働省が指定する事項」については、以下の事柄が挙げられます。
- もみりょうじ
- やいと、えつ
- 小児鍼(はり)
- 施術場所の開設、再開の届け出
- 医療保険療養支給申請できる旨
- 出張による施術の実施
- 駐車設備に関する事項
上記以外の情報を記載して宣伝をした場合は、法律違反とみなされ、30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
医業類似行為は治療行為ではないものの、人間の身体に重要な影響を与える施術です。
しかし、その内容を細かく書いた広告を一般人が見てもすべてを理解することはできません。
消費者に間違った認識を与えないように、あはき法では厳しく広告規制をしているということを覚えておきましょう。
広告の種類
あはき法が絡む広告の種類は、以下のようなものがあることを把握しておきましょう。
- チラシ(折り込み広告)
- パンフレット
- 新聞、雑誌
- 看板、ポスター
- Eメール
- インターネット上の広告(バナーなど)
- テレビ、CM
- Webサイト
- 不特定多数が訪れる説明会、説明用スライド等
上記のものはすべて広告とみなされます。
しかし、広告とみなされないものは以下のようなものが該当します。
- 学術論文
- 体験談や手記
- 院内で掲示しているポスターやPOP
- 院内で配布するパンフレット
- 患者からの申し出に応じて送付するパンフレットやメール
- 従業員募集に関する広告
これらは広告と判断されないので、ある程度表現の幅が広いといえるでしょう。
とはいえ、消費者が誤認するような表現にならないよう注意しなければなりません。
あはき法の広告制限のポイント5つ
鍼灸院や整骨院及び接骨院を宣伝するうえで、特に注意するべき広告制限のポイントは5つあります。
・誇大広告
・他店との比較
・施術内容等に関する具体的な記載
・適応症の記載
・院長の経歴や実績の記載
1つずつ順番に確認していきましょう。
誇大広告
鍼灸院や整骨院及び接骨院に限ることではありませんが、広告作成の際は誇大広告にならないように注意してください。
誇大広告とは事実とは異なる大げさな表現をし、消費者に誤解を与えかねない広告を指します。
そのため、「確実に治ります」「〇〇に効きます」「改善率100%」のような表現は避けましょう。
他店との比較
宣伝をする際に、他の鍼灸院や整骨院及び接骨院よりも優れていると捉えられかねない表現は使用できません。
具体的には「全国最優良店〇〇」のような表現が当てはまります。
消費者を不当に引きつけるような表現はいかなる場合でも認められていないため、広告を出す際には他店との比較をしないように気をつけてください。
施術内容等に関する具体的な記載
あはき法では広告への具体的な施術方法は記載できません。
そのため、施術内容での差別化やアピールはできないので注意が必要です。
なお、整骨院などで多い流派についての記載ですが、これらもあはき法では規制対象となっています。
消費者に対するアピールポイントとなる点となるものの、法律違反とみなされる点でもあるため、記載は控えましょう。
適応症の記載
鍼灸院や整骨院及び接骨院では治療と誤認されるのを防ぐため、適応症の記載を禁じられています。
そもそもあはき師は医師ではないので、治療行為はできません。
そのため、先述の通り施術は治療行為ではなく医業類似行為に分類されています。
治療行為でなくては対応できない疾患(がん、腰痛、肩こり、むちうち等)が改善する、などの誤解を与えないため、適応症の記載はNGです。
院長の経歴や実績の記載
チラシやホームページなどに、鍼灸院や整骨院及び接骨院の院長の経歴や実績は記載できません。
さまざまな経歴や実績がある方は思わず記載したくなるかもしれません。
しかし、これらはあはき法第7条に記載されていない項目であるため、記載はNGです。
その他にも施術中の写真や職務に関わりのない資格も記載できないので注意しましょう。
あはき法と薬機法( 薬事法 )・医療広告ガイドラインの関係性
あはき法の広告に関するガイドラインは、医療法に関わる「医療広告ガイドライン」を参考にして検討が進められています。
その他あはき師が営む医院に関して、以下4つの法律が大きく関わってきます。
- 医師法
- あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法( 薬事法 ))
- 景品表示法
これら4つすべての法律を理解し、消費者に安心して来店してもらえるよう配慮をしていきましょう。
※薬機法については健康食品・化粧品等を扱う場合
あはき法に適応した広告を!
インターネットの発達により、誰もが簡単に情報を入手できる時代です。消費者に誤解を与えないためにも、正しい情報発信を心がける必要があります。
あはき法違反による指導は、主に同業者の告発がきっかけであることが多いです。
「小さな店だから大丈夫」と思っていると、思わぬタイミングで指導や処分を受けるかもしれません。
なお、2021年から薬機法( 薬事法 )の課徴金制度が始まることもあり、広告に関する行政の目はさらに厳しくなっていくことが予想されます。
あはき法も例外ではなく、今後鍼灸院や整骨院及び接骨院は広告の表現方法について、さらに注意する必要があるのです。
法律違反となって指導または処分を受けないためにも、あはき法に適応した広告作成を心がけましょう。