健康・美容に関する製品を扱っていて、「海外へビジネスを展開していきたい!」という事業者は多いのではないでしょうか。
日本から海外へ製品を輸出する際には、安全を考慮して決められたルールを守らなければなりません。
また、違反した場合には、罰則も受けるため注意が必要です。
今回は、アメリカに製品を輸出する際に関係するFDAという機関について詳しく解説します。
もくじ
FDAの概要
FDAとは「Food and Drug Administration」の略称で、正式名称は 「アメリカ食品医薬品局」といいます。
日本における厚生労働省や農林水産省などの官庁に近い政府機関です。
FDAの任務は、 人および動物用の医薬品、生物製品、医薬機器、食品、化粧品、また放射線を放出する製品の安全性と効果を保証することによって国民の健康を守ることです。規制対象である製品の認証許可や違反品の取り締まりなどを行います。
また、FDAは公式サイトにて、自らの使命(FDA’s mission statement)を公表しています。
日本語訳は以下のようになります。
「医薬品および動物用医薬品、生物学的製剤、医療機器、国内の食糧供給、化粧品、そして電磁波を放出するような製品の安全性と有効性を保証することによって国民の健康を守ることが、FDAの責務である。加えて、医薬品や食品をより効果的に、安全に、そしてより安価にするための技術革新を加速させることによって国民の健康を増進すること、そして国民が自らの健康を増進するために必要な医薬品や食料に関する正しい科学に立脚した情報を国民に与えることもFDAの責務である。」
参考:|FDA
FDAが規制する対象の製品をアメリカへ輸出して販売しようとする場合には、FDA認証が取得されていない場合、厳しい罰則が課せられることがあります。
そのため、FDAのルールを知って遵守しなければなりません。
日本の薬機法とFDAの違い
日本の薬機法とFDAにはどのような違いがあるのか、規制する対象となる項目をみていきましょう。
日本の薬機法が関わる項目
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質と有効性及び安全性を確保するほか、製造販売・表示・広告・流通などを規制しています。
医薬品や化粧品等の虚偽・誇大広告に対する規制も定められていて、健康食品においては、医薬品と誤解を与えるような効能効果を標榜した場合に薬機法違反の対象となります。
参考:厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
FDAが関わる項目
FDAは以下の項目に対してそれぞれの責任を示しています。
医薬品
製品の販売承認:OTC薬および処方箋薬の表示:医薬品製造基準(GMP)
生物製品
製品および製造施設の許可、血液供給の安全性、製品基準の設定と検査方法の改善に対する研究
化粧品
安全性と表示
食品
表示、全食品の安全性(食肉および家禽肉を除く)、ボトル飲料水
医療機器
新医療機器の市販前承認、製造および性能基準、機器の製造と重大な有害作用の追跡報告
放射線放出電子製品
電子レンジ、テレビ受信機、診断用製品、エックス線装置、レーザー製品、超音波療法装置、水銀灯、紫外線ランプなどに対する放射線の安全性能基準、マンモグラフィー施設の認証と査察
動物製品
家畜飼料、ペット用食品、動物用医薬品および動物用医療機器に対する販売承認、表示、製造基準(GMP)
日本の薬機法とFDAの管轄
日本の薬機法は厚生労働省が管轄です。
1960年に旧薬事法が制定され、2014年には法改正が行われて「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と名称が変更されています。
対して、アメリカのFDAは、保健福祉省(HHS)が管轄です。
保健福祉省とは、国民の健康保護に関する行政と人的サービスを必要とする福祉に関する行政を使命とするアメリカ連邦政府機関です。
日本の政府機関でいうと、「厚生労働省」から労働省の仕事を抜いた部分、つまり昔の「厚生省」に似た機関となります。
FDA取得について
FDA規制の対象となる製品においては、それぞれ定められている規定があります。
例えば、アメリカ国内で食品関連施設を新しく作る際には、以下の項目をFDAに登録しなければなりません。
- 責任者
- 経営者や代理人
- 施設の名称
- 住所
- 扱う食品分類
今回は、 日本からアメリカに製品を輸出する際のFDA認証について概要をみていきましょう。
製品によって手続きの過程が大幅に異なるため、扱う製品が何の品目かを確認することがポイントです。
例として、食品とOTC(Over The Counter)医薬品を日本からアメリカへ輸出する際の留意点をお伝えします。
ちなみに、OTC医薬品は用指導医薬品・一般用医薬品を指す言葉です。
食品を日本からアメリカへ輸出する流れ
「食品」と定義される品目は以下です。
- 栄養補助食品および栄養成分
- 乳児用ミルク
- 飲料(アルコール飲料およびボトル入り飲料水を含む)
- 果物および野菜
- 水産物および水産加工品
- 乳製品および殻つき卵
- 食品またはその構成物として使用される未加工農産品
- 缶詰食品および冷凍食品
- パン製品、菓子類、砂糖菓子(チューインガムを含む)
- 生きている食用動物
- 飼料およびペットフード
- 食品および飼料の成分
- 食品および飼料の添加物
上記の 「食品」を輸出する際には、FDAへの事前通知が必要となります。
以下に、 事前通知に必要な情報を一部抜粋します。
- 事前通知の提出者の情報(氏名や住所、連絡先など)
- 食品の詳細情報
- 製造業者の確認情報(施設登録番号など)
- 生産国
- 輸入業者、荷主、最終荷受人の確認情報(氏名、住所、登録番号など)
実際に輸出する際には必要情報を確認の上、手続きが必要です。FDAの公式サイトも参考にしてみてください。
参考:|FDA
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)|バイオテロ法に関する情報(FDA食品施設登録・事前通知)
OTC医薬品を輸出する流れ
アメリカに輸出されるOTC医薬品は、アメリカ国内で製造・販売されるOTC医薬品と同様の規制下に置かれます。
OTC医薬品の販売までの流れ
OTC医薬品の販売方法は以下の2種類があります。
1:OTC医薬品モノグラフ(市販薬の基準承認の根拠となるもので、OTC医薬品として許容される有効成分、用量、剤形およびラベル表示についての情報が含まれている)に収録された情報に基づいて製造し、 承認申請プロセスを経由せずに販売する。
2:FDAの医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research:CDER)に 新薬承認申請(New Drug Application:NDA)を行って承認を受ける。アメリカ国内に法人を持たない日本企業がNDA申請を行うには、申請に係る米国内の代理人を置く必要がある。
なお、 OTC医薬品の大部分は1の方法で販売されています。
OTC医薬品のラベル
消費者にとり、読みやすく理解しやすいように、OTC製品では、ラベルに記載される内容と書式が標準化されています。メーカーはFDAが定めるラベルの規則を遵守しなければなりません。
GMP規則の順守
OTC医薬品の製造は現行の医薬品製造管理および品質管理基準(current Good Manufacturing Practice、cGMP)に準拠している必要があります。
企業登録の際、企業は本社情報(社名、住所、電話番号やEメールなどの連絡先)に加えて、代理人情報(名前、住所、連絡先)が必要となります。
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)| OTC医薬品(医師の処方箋がなくても店頭で購入できる医薬品)の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出
FDAの罰則
FDAは医薬品、医療機器、食品、化粧品、動物用医薬品など規制対象製品の不良品または不正表示品、製造業者の法律違反や流通業者に対して法的措置をとります。
FDAがとる法的措置は回収、押収、告発、禁止命令、召喚および警告文書などです。
場合によっては刑罰や罰金に科せられることもあります。
食品分野における刑罰では、違反行為を犯した場合には1年以下の禁固もしくは違反案件1件について1000ドル以下の罰金、またその両方が科せられる点に注意が必要です。
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)|2019年度米国の食品安全・輸入関連制度の解説(第三版)
日本からアメリカへの輸出はFDAを前提に
これまでお伝えしたように、 日本からアメリカへ医薬品・化粧品・食品などのFDAが規制対象としている製品を輸出する際にはFDAの定めるルールを守る必要があります。
海外でも健康・美容・医療に関するビジネスを拡大したい事業者はアメリカの法律もしっかり把握しておきましょう。